夜明けの霧が晴れる前から、ドリアは粘土壁を叩いていた。
指の関節で二度、槌の柄で一度叩いて鈍い音を聞いた彼は、下の方の壁に耳を当てた。一晩で乾ききった粘土からは、ひび割れる音はしなかった。
「よし」
ドリアが髭についた土埃を払った。
「もう積んでいいぞ」
カン・ムジンは炉の底に手を置いた。中心に残った湿り気と、石ごとに異なる熱膨張が感覚に引っかかった。
「下から乾かすべきです」
「炉を三十二基造ったわしでも分かる」
「私は初めてです」
「なのになぜ、お前の方が堂々としている?」
二人は言い争いを、手よりも先に終わらせた。カン・ムジンが熱に耐える石を選んで渡せばドリアが曲面を積み、アイシャは水気の違う粘土を分けた。日が丘の上へ昇るころ、肩の高さの壁が立った。
問題は風だった。ドワーフ式の双ふいごを作る革も、踏む人手も足りなかった。ただ一本しかない青銅の管をまっすぐ差し込めば、不純物の多い鉱石の片側だけが溶けて炉を塞ぐはずだった。
カン・ムジンは管の端を弱く熱してから濡れた砂を詰め、緩やかに曲げた。ドリアはその管を図面の上に置き、しばらく髭を撫でた。
「火を回そうというのはいいが、南西の風が強まれば温度が跳ね上がる」
丘から下りてきたシルヴァナが、日が暮れるまで風は続くと知らせた。二人の職人は同時に空き地を見た。
ドリアが広い空気箱を描き、カン・ムジンは圧力が過ぎたときに開く、錘のついた排出板を描き足した。自然の風を革膜に溜めて一定にし、弱まったときだけ小さなふいご一つで補う構造だった。
「革は半分、人は一人」
「次に造るときのために、資材と寸法をすべて記録してください」
半日後、風受けが空気を呑み込んだ。最初の錘は重くて開かず、二つ目は軽くて風をすべて逃がしたが、カン・ムジンが三つ目の鉄塊の密度を合わせると、排出板は圧力が満ちた瞬間だけ指一節ぶん持ち上がった。
管から出た風が、炉の中の灰をひと回り巻いた。
「よし」
「火を入れてみなければ分かりません」
ドリアはぶつぶつ言いながらも、口元を下げられずにいた。
日が西へ傾く前に、炉が完成した。
カン・ムジンはすぐに鉱石を入れず、よく乾いた小枝と炭の粉で弱い火から焚いた。壁に残った湿り気がゆっくり抜けていき、粘土の表面に結んだ水滴が湯気になって立ち上った。
火を強く大きくしたい気持ちは、誰にでもあった。ローゼンも、ラカンも、アイシャも炉の前で待ち、腕を組んだドリアはつま先で地面を叩いた。
カン・ムジンは待った。
粘土の内側の温度が外と近くなるまで炭を少しずつ足しながら、炎が壁の片側を舐めれば棒で炭を散らした。送風口を開けては閉め、空気の量も調節した。
日が尾根に触れると、南西の風が吹いた。
風受けが低く鳴って革膜が膨らみ、青銅の管からは長く一定の息の音がした。炉の内側の炎は片側へ倒れる代わりに、壁に沿って回りながら赤い円を描き、濃さを増した。
ドリアがふいごの取っ手から手を離した。
それでも火は死ななかった。
「ほう」
ラカンが耳を立てた。
「炉が息をしているようだな」
「息をするのは革です」
カン・ムジンが言った。
ドリアが鼻で笑った。
「その革に肺をつけてやったのは誰だと思っている」
温度が十分に上がると、二人は炭と細かく砕いた鉄鉱石を交互に入れた。カン・ムジンが不純物の少ない筋目を示せば、ドリアの槌がその線を断ち割った。
問題は、鉱石が沈み落ちる前に、青銅の送風管の方が先に軟らかくなり始めたことだった。
「風を減らせば火が死ぬ」
ドリアが濡れた布を手に取ると、カン・ムジンが止めた。
「急に冷やせば管が割れます。炎を中央へ移します」
彼は炉の中の鉄の粒の向きだけを少しずつ変えた。溶け始めた鉄が炭の間へ集まり、空気の道を変えると、送風口を舐めていた炎が炉の中心へ向き直った。スラグの流れる隙間まで残さねばならず、手首が焼けるように痺れ、息が短くなった。
「そこまでだ」
ドリアが彼の腕を掴んだ。カン・ムジンが手を引いたとき、青銅の管は垂れ下がる寸前で止まり、赤い鉄の塊はちょうど炉の底へ沈んでいくところだった。
ドリアは排出板の錘を動かした。
「風は三つに分ける。弱火、中火、強火だ」
「掛け金の位置が三つあれば足ります」
二人は互いを見ずに言った。
火は日が沈んだ後まで続いた。
ついにドリアが炉の下の出口を開けると、黒ずんだ赤いスラグがまず流れ出した。粘り気は強かったが詰まりはせず、続いて炭と鉄の粉が固まった海綿鉄の塊が姿を現した。
完璧な鉄ではなかった。
穴が多く不純物も残っていて、そのままでは刀どころか、まともな鎌すら作りにくかった。
カン・ムジンは鋏で塊を取り出し、金床の上に載せた。
「叩きます」
「当たり前だ」
ドリアが大槌を持つと、カン・ムジンは小槌で位置を定めた。二度速く叩き、一度長く響かせた。
カン、カン。カン――。
ドリアの大槌がその場所へ落ちた。
ガァン。
不純物が飛び散った。
再びカン・ムジンの槌が道を示した。
カン、カン。カン――。
ガァン。
二人の槌が交互に鳴った。一方は鉄の状態を読み、もう一方は数百年受け継がれたドワーフ式の打撃で塊を折り重ねた。カン・ムジンが筋目の割れる場所を指させばドリアがその反対側を押さえ、ドリアが鉄を立てて角を取れば、カン・ムジンは内側に閉じ込められた滓を外へ押し出した。
鉄は冷めるたびに、再び火の中へ入った。
送風口の掛け金が中間の位置へ移されると、炉はふいごを踏む者が一人もいなくても一定の熱を吐いた。
三度目の折り返しで鉄の穴が減り、五度目には槌の音が澄んだ。七度目が終わったとき、金床の上には前腕ほどの長さの角鉄が一本置かれていた。
ドリアがそれを鋏で持ち上げた。
「最初の鉄塊だ」
人々が近くに集まると、アイシャは顔に炭の粉をつけたまま角鉄を見上げた。
「これで何を作るんですか?」
「必要なものです」
カン・ムジンは角鉄の端を切り、再び炉に入れた。
赤く灼けた鉄を金床に載せて長く延ばしながら、先端は平たくし、中央は硬いまま残した。反対側は曲げて、木の柄が入る目を作った。
ドリアが尋ねた。
「刀ではないのか?」
「今必要なのは刀ではありません」
鉄はさらに何度か、火と金床を行き来した。
出来上がったのは小さなつるはしの刃だった。炉の周りの排水溝を掘り、北の鉱脈から鉱石を掘り出す道具だったから、飾りはなかった。刃は薄すぎず、衝撃を受ける背の部分は厚く残した。
カン・ムジンは刃を研いで状態を確かめた。
硬さは十分だった。純度は思ったより良かったが、筋目の間に小さな不純物がいくつか残っていて、剣に仕立てるならもう一度折り返していただろう。つるはしとしては、長く保つはずだった。
彼は鏨の先を立て、つるはしの刃の内側を叩いた。
小さな刻印が刻まれた。
目につきにくい場所に残ったのは、鉄の筋目に似た単純な印だった。前世から、自分が鍛えた品には必ず残してきた痕跡だった。
ドリアが刻印を見下ろした。
「こんなところに刻んで、誰が見るというんだ」
「見る必要はありません」
「では、なぜ残す?」
カン・ムジンはつるはしの刃を水に浸した。
ジュッ。
白い湯気が立ち上った。
「私が知っています」
ドリアは言い返さなかった。つるはしの刃を受け取って二度ほど振ってみた彼は、柄に嵌めて楔を打ち込み、石の地面を打ち下ろした。
ドリアがつるはしを肩の上まで振り上げた。
ガァン。
石の地面の亀裂が三方へ伸びた。つるはしの刃は曲がりも刃こぼれもせず、むしろ衝撃を受けた後の方が澄んだ音を立てた。
炉の前の槌の音が一つずつ止んだ。数百年鉄を扱ってきたドワーフの職人が刃を裏返して見て、背と目を爪で引っ掻き、また黙り込んだ。
「我らの山の良い鉄と競っても、負けはすまいな」
初日に完成した炉と、雑鉱から取り出した鉄だった。その一言が落ちると、人々はつるはしではなく、後ろで自ら息づく炉を振り返った。同じ火が、明日からは一つではなく十になり得た。
ローゼンが帳簿に何かを書き記した。
「鋼鉄堡塁 生産品 第1号。採掘用つるはし」
アイシャがつるはしの内側を覗き込んだ。
「この印はカン・ムジンおじさんのですか?」
「そうです」
「私が作った釘にはないのに」
「それはあなたが作ったものです」
子どもは礎石の横の名札を振り返った。暗闇の中でも、曲がった釘の頭がかすかに光っていた。
「じゃあ次は、私も刻みます」
「使えるものを作ってからです」
「使えます。名札、落ちてないもの」
「なら、もう残したことになります」
アイシャはしばらく考えてから、頷いた。
夜は更けたが、誰もすぐには天幕へ戻らなかった。
炉が低く重い音を立てて燃えている間、その火明かりの下でローゼンは明日掘る鉱石の量を計算し、ラカンはつるはしの柄を握ってみて重心を確かめた。シルヴァナは少し離れて立ち、炉の上へ昇る煙を眺めていた。
ドリアは送風装置の横にしゃがみ込み、掛け金三か所の間隔を測り直した。
「次のは空気箱を少し低くせねばな」
「管ももっと厚くする必要があります」
「青銅の代わりに鉄でいこう」
「先端部分だけ交換できるように作れば、修理が楽です」
「そうだな。ねじ止めは熱を受けると焼き付くから、楔で固定して」
ドリアが炭のかけらで地面に線を引くと、カン・ムジンはその横に管の断面を描き足した。
二人はしばらく、線を消しては描き直した。今造った炉一基で終わる話ではなかったから、より大きな炉が必要だったし、より少ない人手でより多くの鉄を取り出さねばならなかった。鉱石の質によって、風の強さも変わらねばならなかった。
ドワーフの古い技術は、堅固な骨組みだった。
カン・ムジンの感覚は、その骨組みの中で詰まる場所を見つけ出した。
どちらか一方だけでは、今日の火を安定させられなかったはずだった。
ドリアが炭のかけらを置いた。
「この方式に名前をつけねばならんな」
「まだ早いです」
「またその台詞か?」
「炉を一基造っただけです」
「最初の炉だからこそ、名前をつけるのだ」
カン・ムジンは燃え盛る火を見た。
「もっと良いものを造ってから、つけてください」
ドリアが髭を撫でた。
「なら、造り続けねばならんな」
「そのために火を入れたのです」
炉の炎が一度、大きく息をした。
新しい送風装置の排出板がカタリと開いて閉じると、風が管を通って炎の真ん中へ入り、炭が赤く生き返った。
カン・ムジンは出来上がったつるはしの刻印を親指で撫でた。
この土地で採れた鉱石だった。この土地の石と土で造った炉から、ドワーフの技術と自分の感覚を合わせて取り出した鉄だった。
鋼鉄堡塁で初めて作られた品は、人を斬る刀ではなかった。
土地を開く道具だった。
彼はそれが気に入った。
翌朝も、炉の火は消えていなかった。
一晩じゅう交代で炭を足したおかげで、赤い火種が炉の底で均等に息づいていた。カン・ムジンが送風口を開けると、炎は再び壁を伝って回った。
煙がまっすぐに立ち昇った。
灰色の柱は丘の上まで昇り、朝の風に乗って北へ長く流れた。天幕が数張りあるだけだった空き地に人がいるという印であり、火を扱い鉄を作り、退かぬ者がいるという印でもあった。
カン・ムジンは煙の先を眺めてから、手を下ろした。
北の道の下から、小さな金属の音が感じ取れた。
一つではなかった。
錆びた釜の縁、折れた鎌、車輪から抜けた鉄釘。互いに異なる金属が不規則に揺れながら、こちらへ近づいてきていた。歩みは遅く、たびたび止まった。
しばらくして、ラカンが斜面の上に姿を現した。
その後ろからは、疲れた人々が列をなして上ってきていた。ある者は子どもを背負い、ある者は壊れた荷車を引いていたが、彼らの持つ鉄器はどれもこれも錆びているか、欠けていた。
先頭の老人が炉の煙を見上げた。
そして、胸に抱えていた折れた鍬の刃を、いっそう固く握りしめた。
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