炉の火が高くなった。
ドリアが送風の取っ手を引くたびに炭の間へ白い光が広がり、カン・ムジンは熱した鉄帯を金床の上に載せた。盾の縁に巻く物だから刃のように硬い必要はなかった。衝撃で砕けぬだけの粘りを保ちつつ、盾の曲面に沿って撓むよう、厚さと温度を均一に合わせるほうが重要だった。
槌が三度下りた。
四度目の打撃を前にカン・ムジンは手を止めた。夜通し北西の山道を下ってきた鉄の群れが近づくにつれ、互いに異なる肌理が鮮明になったからだった。先頭の行列から感じられる金属はほとんどが細く軽く、一定の重さに鍛えられた小さな鏃が人の歩みに合わせて揺れていた。鏃ごとに残る微細な螺旋の跡は、彼が以前手入れしたシルヴァナの矢と同じものだった。
「エルフです」
ドリアが送風の取っ手を放さぬまま首を回した。
「あの鉄が全部矢だと?」
「大半はそうです」
「弓引きどもが、森ひとつ空にするほど担いできたな」
カン・ムジンは北に残る別の気配を再びたどった。厚い鉄板と長い槍の穂、広い盾の縁と思われる鉄は、依然として遠い稜線の向こうに留まっていた。夜のあいだ近づかず、むしろしばらく止まって方向を測っているようだった。
同じ群れではなかった。
だからといって脅威が消えたわけでもなかった。
防壁で弓弦を引く音が続けて聞こえると、カン・ムジンは槌を置いて外へ出た。北門の内側には自警団が集まっており、ラカンは低く伏せて風の匂いを嗅いでいた。その耳が尾根に向かってまっすぐ立った。
「血の匂いはない。魔族の匂いでもない」
「森から来た者たちです」
「シルヴァナか?」
「そうでしょう」
ラカンが手を下ろすと自警団員たちは弓を下ろしたが、その場を離れはしなかった。訓練を始めて間もない人間の青年が弦から矢を抜こうとして床に落とすと、ラカンが顎をしゃくった。
「拾え」
青年が慌てて腰をかがめた。
「戦いになれば、落とした奴より、拾おうと頭を下げた奴が先に死ぬ」
青年は唇を噛んで矢を拾い、再び隊列に戻った。
カン・ムジンは北門を塞いだ二重の鎖の前で足を止めた。荷車二台が内側に斜めに置かれ、急ごしらえで打ち込んだ鉄柱からはまだ油の匂いがした。外套を羽織りながら駆けつけたローゼンは、物見櫓に先に人を上げてから北西の山道を窺った。
「長老会の答えが来たようですね」
「良い答えかは、まだ分かりません」
「拒絶だけなら、シルヴァナ卿が一人で戻ったでしょう」
赤い灯りが近づいた。松明にかぶせた覆いが風に揺れるたび細い光が漏れ、ついに行列の先頭に立つシルヴァナが姿を現した。
緑の外套の裾には長い道のりの土が乾いてこびりついていた。その後ろにはエルフの弓が二十四、歩いてきた。皆が弓と矢筒を二つ背負い、胸と肩には硬い木板と重ね革を編んだ軽甲をまとっていた。
彼らは北門から三十歩離れた場所で同時に止まり、シルヴァナだけが一人前に出た。
「森エルフ長老会の使節、シルヴァナ・エイレンが戻りました」
カン・ムジンは鎖を解かせた。
「お入りください」
「先に伝えることがあります」
シルヴァナの、弓を握る手に力がこもった。
「長老会は鋼鉄堡塁と同盟を結びませんでした。ここを国家や領地として承認もしていません」
防壁の上で小さなざわめきが起きたが、シルヴァナは言葉の速さを変えなかった。
「長老会が認めたのは、接境の脅威と、私が提出した報告の事実性です。それに従い、私の判断のもとで小規模な弓隊を連れていくことを、一季のあいだ許しました」
ローゼンが低く問うた。
「長老会の正式な派兵軍ではない、という意味ですか?」
「そうです。志願者を選び、指揮者を定める責任は私にあり、長老会はその裁量を限定的に許したにすぎません」
兵は来たが、森の旗も、全面同盟の約束も来なかった。危うくなれば長老会は彼らを正規軍ではないと線を引くことができ、失敗すればシルヴァナ個人の誤判断として残すこともできた。
カン・ムジンはシルヴァナの外套についた土を見つめた。弓幹をゆっくり擦る親指は、普段より硬かった。
望む答えを得てきた者の手ではなかった。
だからといって、空手でもなかった。
エルフたちの中から白髪混じりの男が前に出た。
「森路の守備隊を退いた者たちと、辺境の志願者たちだ。私を含めて弓二十四、テルウィン・ラエサルがこれらを率いる」
彼は防壁と柵、北門を塞いだ荷車を順に見渡した。歓迎される場所を見る顔というより、崩れる場所を探す目に近かった。
カン・ムジンが問うた。
「条件は何ですか?」
シルヴァナが答えた。
「弓隊の指揮権はテルウィンにあります。同族の捕虜を救出する可能性が確認されればその任務が優先され、鋼鉄堡塁が先に魔族の領土を侵犯する場合には参戦しません。一季の後には、各自が残留の可否を改めて決めます」
ラカンが鼻で笑った。
「戦いに来たんじゃなく、見物に来たわけだ」
テルウィンの目つきが細くなった。
「狼の解釈は、いつも音から大きいのか?」
ラカンの耳が後ろへ倒れると、カン・ムジンが二人の間に立った。
「ここまで来た理由は見物ですか?」
テルウィンはカン・ムジンと向き合った。その視線は顔より手に長く留まり、火傷の痕とたこ、爪の下の鉄粉を順に確かめるようだった。
「シルヴァナ・エイレンが見たものが事実か、判断しに来た」
「見ればいい」
「我々があなたの命令に従わなくてもか?」
「受け持った場所は守らねばなりません」
「その場所は誰が決める?」
カン・ムジンは北東の防壁を指した。そこは地形が低く、涸れた小川が防壁の外を回り込んで死角を作っていた。遠く森の縁まで視界が開ける代わりに遮蔽が少なく、敵の動きを先に見られるだけ、先に晒される場所だった。
「弓を最も遠くへ飛ばせる者が決めてください」
テルウィンがそこを検分した。
「良い場所を譲ると思っているのか?」
「危険な場所です」
「正直だな」
「壁は、長くは嘘をつけません」
カン・ムジンは鎖を完全に取り払わせた。
「指揮権はお持ちください。ただし警戒の鐘が鳴れば、定めた場所へ行かねばなりません。どの種族が攻撃されても同じです」
テルウィンはしばらく答えぬままシルヴァナを見た。シルヴァナは何も言い添えなかった。
ついに彼が手を挙げると、弓二十四が北門を通った。
鋼鉄堡塁の住民たちは道の両側へ退いた。子どもたちは長い耳と緑の外套を見つめ、大人たちの顔には期待と警戒が同時に浮かんだ。エルフたちもまた、山羊の獣人が引く荷車と人間が立てた柵、土を突き固めるオークの老人を、休みなく見回した。
テルウィンは鍛冶場の前に掛けられた黒い鉄板の前で足を止めた。魔族の捕虜の装備から剥がした板で、刻まれていた文字は消され、その隣にはカン・ムジンの小さな刻印だけが残っていた。
「あれは何だ?」
「捕らえた者たちが残した記録です」
「魔族を生け捕りにしたのか?」
「三人捕らえました」
シルヴァナが付け加えた。
「私が森の境に着いた翌日、残しておいた風の精霊が、堡塁の書記の封印の鉄札を運んできました。私が不在のあいだに捕虜三人を別々に閉じ込め、分離して尋問した記録と、兵力運用・奴隷輸送の経路が記されており、長老会に追加報告として提出しました」
テルウィンは黒い鉄板を見つめたまま言った。
「長老たちは、その封印の鉄札まで読んだ」
彼の声が少し低くなった。
「読んでもなお許したのは、二十四だけだ」
シルヴァナの指が弓を一度締めた。
カン・ムジンが鍛冶場に入ると、テルウィンと弓が数人ついてきた。炉の前ではドリアが鉄帯を再び熱しており、見知らぬ者たちが入ってきても、首すら回さなかった。
「足をどけろ。風の道が塞がる」
入口に立ったエルフが眉を吊り上げた。
「我々は長老会の許しを得て来た」
「炉が長老会の名を聞いて熱くなるなら、そこに立ち続けてろ」
ドリアが熱した鉄帯を取り出しながら鼻息を吹いた。
「ふん。でなきゃ、どけ」
テルウィンが手を挙げると、エルフたちは壁際へ退いた。
カン・ムジンは彼らの矢を一本受け取った。矢柄はまっすぐで、羽三枚の角度も正確であり、鏃には純度の高い鋼が使われていた。ただ、過度に硬く焼き入れされていて、森の獣の皮を貫くには良くとも、盾の縁に斜めに当たれば先端が欠けかねなかった。
「魔族の鎧を射たことはありますか?」
「三度ある」
「結果は?」
「百歩の内で、脇と首を貫いた」
カン・ムジンは鏃を指で押した。金属の肌理が感覚の中で細く鳴り、焼き入れの過程で生じた応力は鏃の先端に集まっていた。
「よく作られた矢です」
テルウィンは黙って次の言葉を待った。
「ただ、次の敵は大きな盾を持って来るでしょう」
カン・ムジンは鏃を炉の縁の弱い火に当て、矢柄をゆっくり回した。熱が片側に偏らぬよう含ませたのち、鋼の張りが解けつつ刃が崩れない一点で取り出し、灰の中に横たえた。
テルウィンが言った。
「鏃の先を軟らかくしたな」
「砕けません」
「代わりに、食い込みは浅くなる」
カン・ムジンは金床の下から、鉤のように先の曲がった試作品を取り出した。
「盾を貫く必要はありません。縁や継ぎ目に掛かればいい」
「後ろから綱を引いて盾を傾け、次の弓が隙を射る」
「そうです」
テルウィンは試作品を三度回してから矢柄に嵌め、重心を確かめた。カン・ムジンは彼の顔に感嘆を探さなかった。物を検める手つきがあれば十分だった。
「我々の矢を、どれだけ手直しできる?」
「二人がかりなら、日が昇る前までに百五十本です」
ドリアが槌を振り下ろしながら口を挟んだ。
「俺の炉で誰を使うかは、俺が決める」
「では、決めてください」
「エルフ二人。手の早い奴だ。槌打ちは任せん。矢柄と羽だけ触れ」
テルウィンが二人を指名すると、彼らは不服そうな顔で前に出たが、文句は言わなかった。
アイシャが鏃を入れる鉄の皿を持って近づいた。見知らぬ者たちをしばらく眺めていた子は、カン・ムジンの傍らに立って尋ねた。
「エルフも味方なの?」
鍛冶場が少しのあいだ静かになった。
カン・ムジンは、テルウィンが答えるのを待った。
テルウィンはアイシャの耳の先とうなじに残る薄い傷跡を見てから、手にした矢を皿に置いた。
「一季のあいだは、そうだ」
「その次は?」
「我々が見たものを伝えて、また決める」
アイシャは鏃を一つ摘み上げて目の高さに合わせ、カン・ムジンに教わったとおり歪みがないかゆっくり回して確かめてから、皿に置いて言った。
「じゃあ、よく見ればいいね」
ドリアの槌が再び下りた。
その日の午前、エルフとドワーフは同じ炉の傍らで矢を手直しした。
テルウィンが連れてきた弓たちは眠りを後回しにして北東の防壁へ移った。彼は自ら歩幅を測って射撃位置を定め、防壁の上に白い枝を挿して距離を示したのち、射程ごとに使う矢を分けて置いた。
人間の自警団員たちがその様子を見守ると、エルフの弓の一人が彼らを呼んだ。
「弓を取れ」
「私たちがですか?」
「その手で槍だけ握るつもりか?」
しばらく後、防壁の下に藁束の的が立てられた。エルフたちは人間と獣人に呼吸と足の角度を教え、同じ過ちを二度犯せば弓幹で手足を押して姿勢を正した。
ラカンが腕を組んで見ていて、テルウィンに尋ねた。
「我々の訓練にまで口を出す気か?」
「隣の者の背を射抜かせないのは、口出しではない」
「言うことは正しいな」
「狼も、正しい言葉は聞き分けるらしい」
ラカンが牙を剥いた。
カン・ムジンは二人の間を通りながら言った。
「的をもう一つ立ててください」
ラカンが鼻から息を吐いた。
「あんたがいなけりゃ、とっくに噛みついてた」
「そうなれば、兵が一人減ります」
「分かってる」
正午ごろ、シルヴァナがカン・ムジンを訪ねてきた。
カン・ムジンは防壁の内側に埋める鉄芯を仕上げていた。地中の細い鉱脈から取り出した鉄は不純物が多く刃物には使えなかったが、石と木を留める芯棒としては十分だった。
シルヴァナは槌打ちが終わるまで待った。
「長老会であったことを、もう少しお話しします」
「どうぞ」
「接境の案件を先に審議した七人の長老の小委員会で、二人は私の裁量派遣にすら反対しました。人間が建てた拠点にエルフの血を送ることはできない、と。三人は限定的な試みを許し、残る二人は最後まで立場を明かしませんでした。十二人の長老全体による正式な表決ではありませんでした」
「あなたは何と言ったのですか?」
「私が見たものを話しました」
シルヴァナの声は遅く、正確だった。
「奴隷輸送隊を打ち破っても戦利品を先に数えなかった人、エルフの弓と獣人の剣を同じ金床の上で直した鍛冶師、解放された子が自ら選んだ名を鉄の札に刻んでやり、仮の配給票に載せて守った拠点を話しました」
カン・ムジンは鉄芯をひっくり返した。
「足りませんでしたか」
「足りませんでした。長老たちにとって、人間の約束は短いのです。あなたの残りの生涯をすべて懸けても、彼らには一季節にすぎません」
「そうかもしれません」
「腹は立ちませんか」
カン・ムジンは鋏で鉄芯を持ち上げた。片側の熱がまだ抜けきらず、このままにすれば、冷めるあいだに内部が歪むはずだった。
「古い鉄は、一度熱したくらいでは伸びません」
シルヴァナの手が止まった。
「何度でも火に入れねばなりません。砕けない温度を探して」
カン・ムジンは鉄芯を再び灰の中に埋めた。
「二十四で十分です」
「彼らは、助けるより判断しに来ました」
「判断させておけばいい」
「誤って判断するかもしれません」
「ならば、また見せればいい」
シルヴァナは防壁を見つめた。テルウィンの号令に合わせて飛んだ矢のうち、初矢は的の左に刺さり、二の矢は中央に近かった。
「私は、誤って見た結論をそのままにはしません」
その声は高くなかった。
「聞かなかった者がいるなら、聞くまで話します」
カン・ムジンが槌を取った。
「やることが多そうですね」
「そうです」
シルヴァナはすぐに防壁へ戻った。
日が西に傾くころ、弓二十四の配置が終わった。
八人は防壁の上に、八人は後方の木の足場に位置を取り、残る八人は交代と機動を担った。シルヴァナは弓隊の編制に含まれぬまま、その間を行き来して連絡と精霊術を担当した。ローゼンはその配置を図面に写し、エルフ式の距離標識と人間式の警戒の鐘、ラカンが定めた自警団の交代時刻が一枚に共に記された。
「ようやく防衛線と呼べるようになりました」
ローゼンが言った。
カン・ムジンは防壁に沿って視線を移した。北にはラカンと自警団がいて、北東にはテルウィンの弓たちが位置を占めていた。シルヴァナは二つの戦列をつないでおり、鍛冶場ではドリアが最後の鉤鏃を鍛えるあいだ、アイシャが仕上がった矢を十本ずつ束ねていた。
互いに異なる手だった。
弓の握り方も、石の積み方も違った。まだ一塊とは呼べず、突き合わせた鉄の間のように所々に隙間が残っていたが、そうした隙間は、火に入れて叩き、縮めるほかなかった。
テルウィンが防壁の下へ降りてきた。
「今夜から我々が北東を受け持つ」
「そうしてください」
「あなたの命令は受けない。だが、警戒の鐘には従う」
「十分です」
「十分かどうかは、敵が決めるだろう」
そのとき、北の物見櫓で鐘が鳴った。
一度。
今度は誰も慌てなかった。
自警団が定められた場所へ動くと、エルフたちは黙って弓を取った。ドリアが送風口を閉じるあいだ、ローゼンは図面をたたんで懐に入れ、アイシャは束ねていた矢を壁際へ移した。
ラカンが物見櫓の上で叫んだ。
「北! 騎馬六!」
カン・ムジンは、夜通し稜線の向こうに留まっていた群れから、小さな鉄がいくつか離れ出たのを感じた。薄い胸甲と曲刀、馬銜が真北の荒野を横切って速く接近しており、その後ろの重い鉄は動かぬまま稜線の向こうに残っていた。
先発の観測隊だった。
「門は開けません」
カン・ムジンが言うと、ラカンは北門の後ろに盾を立てた。自警団員たちが槍を手に荷車の間に立ち、手に力が入りすぎて穂先が少しずつ揺れたが、隊列を離れる者はいなかった。
一方、北東の防壁に上がったエルフたちは急がなかった。
テルウィンが白い枝の標識と騎馬隊の距離を交互に見比べて指を二本立てると、交代組八人を除いた弓十六が、それぞれ異なる角度に弓を傾けた。防壁の下ではシルヴァナが一人、枯れ草に手を置いた。
風の精霊が草の葉の間を撫でた。
揺れていた白い標識が、一斉に止まった。
騎馬隊は堡塁の射程を測ろうとするように大きく弧を描いた。先頭の魔族が鞍から身を起こして防壁の高さと北門の造りを窺うあいだ、後に続く二人が短い投槍を抜いた。
テルウィンの指が一本折れた。
弓弦が三つ、先に鳴った。
最初の矢は先頭の馬の前脚の二歩手前に刺さって馬を横へ逸らせ、二の矢は後尾の騎手の、投槍を持つ前腕をかすめた。最後の矢は、ドリアが鍛えた鉤鏃を付けた物だった。それは騎手の体ではなく鞍の下に垂れた鉄環に掛かり、鏃に結んだ細い綱が張ると、防壁の後ろの弓二人が同時に身を低くした。
鞍が片側に傾いた。
騎手が荒野の地面に転がり、空の馬が手綱を引きずって逃げ、残る五騎が直ちに向きを変えたが、シルヴァナはすでに二の矢を放った後だった。
矢は逃げる騎手の肩越しを過ぎて馬銜の脇の革紐を断ち、驚いた馬が頭を跳ね上げて隣の馬とぶつかり隊列が乱れると、テルウィンが手を開いた。
六本が、順を置いて続いた。
殺すための矢ではなかった。
二本は投槍を握った手と馬の前の土に落ち、残る四本は退路の右側に間隔を置いて刺さった。騎馬隊が矢の空けておいた左の道へ寄せられると、涸れた小川の深い段差が姿を現し、先頭の二頭が急いで速度を落としたことで後ろの馬が絡んだ。
「出るぞ!」
ラカンが叫んだ。
鎖の一重が解かれると、ラカンと自警団員四人が北門の外へ飛び出した。地面に転げ落ちた魔族は曲刀を抜こうとしたが、ラカンの盾が手首を押さえ、自警団員たちが穂先で首と脇腹を囲んだ。
逃げた騎馬隊は、仲間を助けに戻らなかった。
テルウィンは最後まで弓を下ろさなかった。敵が射程の外へ出た後にようやく手を開くと、弓たちの構えも共に下りた。味方が門の外へ出た後には、一本も飛ばなかった。
まもなくラカンが捕虜の首根を掴んで引きずって戻った。自警団員の一人の頬には投槍がかすめてできた細い傷があったが歩みは確かで、死者はいなかった。
テルウィンがカン・ムジンを振り返った。
「我々が受け持った場所は守った」
「見ました」
「あちらも見ただろう」
カン・ムジンは稜線の向こうの鉄をたどった。逃げた騎馬隊の馬銜がそちらへ速く遠ざかっており、止まっていた重い鉄たちは、少しずつ間隔を詰め始めていた。
「ええ。報告しに行きました」
ローゼンは捕虜を分離して閉じ込めるよう指示したのち、損傷した矢と回収できる鉤鏃を数えた。鉤鏃の一つは鉄環にぶつかって先が少し曲がっていたが、砕けてはいなかった。
カン・ムジンがそれを拾い上げると、テルウィンが尋ねた。
「焼き入れを解いていなかったら?」
「折れていたでしょう」
「だろうな」
テルウィンは短く答えて防壁の上へ戻った。称賛も謝罪もなかったが、去るときには、試作の鏃をもう一つ手に取っていた。
試験派遣隊が鋼鉄堡塁で行った最初の交戦は短かった。
しかし、矢の使い道と警戒の鐘の約束、異なる指揮を持つ者たちがどの瞬間に共に止まらねばならないかは、十分に露わになった。エルフたちは場所を守り、自警団はその矢の下で門の外へ出て、生きて戻った。
同盟ではなかった。
それでも、防衛線はできた。
夜が下りた後も、エルフの弓隊は持ち場を空けなかった。
シルヴァナは一人、風の精霊を北へ放ち、テルウィンは弓たちを二人ずつ組ませて観測を続けた。人間の自警団はエルフの交代に合わせて鐘を確かめ、ラカンは北門の外へ出た四人に、同じ間隔でもう一度槍を立てさせた。
捕虜は口を開かなかった。ただ、回収した胸甲の内側には三列に打たれた規格表があり、捕虜から回収した曲刀一振りは、稜線の向こうの敵の曲刀と長さも重さも同じ規格品だった。急ごしらえの偵察隊の装備ではなかった。
カン・ムジンは鍛冶場の前に立ち、遠い鉄の動きを窺った。
稜線の向こうでは鉄板が列を揃えていた。長い槍の穂が幾筋にも分かれてはまた合わさり、それより後ろでは、ひときわ重い二つの塊がゆっくり動いていた。歩みの揺れではなく、幾人もが担いで運ぶときに生じる一定の振動が伝わってきた。
ドリアが傍らに来て髭を撫で下ろした。
「さっきの奴らは、目だったな」
「そうです」
「目が帰ったなら、次は拳が来る」
カン・ムジンは答える代わりに、鉤鏃を金床の上に載せた。曲がった先を弱い火で熱して槌で二度直し、冷める前に、自分の小さな刻印を根元に残した。
夜通し、炉は消えなかった。
夜明け前、北を見張っていたエルフが弓幹で防壁を叩いた。音は大きくなかったが、定められた合図を知る者は皆起き上がった。
シルヴァナが物見櫓に上がり、ラカンは北門の前へ行った。ローゼンが図面と名簿を懐に入れるあいだ、ドリアは長柄の大槌を肩に掛け、アイシャは仕上がった矢の束を防壁の下へ運んだ。
カン・ムジンは前掛けを脱いで、作業台の上にたたんで置いた。
夜通し列を揃えていた鉄が、稜線の後ろで動き始めた。厚い盾の縁と鎧の鉄板、数百の槍の穂が同じ歩幅に合わせて荒野へ下りてきていた。その後ろでは、幾人もが分かち担いだ二つの重い金属が、遅いが止まることなく近づいていた。
まだ稜線は敵の姿を隠していた。
しかし、鉄は隠れられなかった。
カン・ムジンは剣を取り、北門へ向かった。
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